主催: 日本地球化学会年会要旨集
本研究では地球化学的手法を用いて、二枚貝類の微細構造の季節的変異がどのような要因によって支配されているか調べた。さらに、5段階水温実験を実施し、水温と微細構造形成の関係を飼育実験により検証した。 アカガイ(フネガイ科)をモデル種として、貝殻微細構造の電子顕微鏡観察および酸素・炭素安定同位体比分析を行った。アカガイは、外層をアラゴナイトからなる交差板構造と混合稜柱構造という微細構造が占めていた。貝殻の酸素安定同位体比分析と貝殻外層の微細構造変化を対比することで、2種類の微細構造が外層に占める割合が水温の季節変動に伴って変化することを見いだした。また、海洋生物環境研究所にて、アカガイの5段階水温実験(13、17、21、25、29℃)を行った結果、殻サイズ、湿重量計測を行った結果、アカガイは実験期間中は17℃区で最もよく成長していることが明らかとなった。さらに、水温が低い温度区の個体ほど、混合稜柱構造の外層に占める厚みが厚く、また、混合稜柱構造の外層に占める面積が広いことがわかった。