弱還元型大気中での有機物生成の検証のため,二酸化炭素・メタン・窒素・水蒸気混合気体への陽子線照射・火花放電,メタン (5%)・窒素 (95%)混合気体(模擬タイタン大気)への陽子線照射・γ線照射を行い,生成物中のアミノ酸分析などを行った。
火花放電では、メタン混合比30%以下ではアミノ酸が検出されなくなったが,陽子線照射では、メタン混合比が1%でもアミノ酸の生成が確認された。このことから、もし原始大気の組成が極めて弱い還元型であった場合、雷によるアミノ酸等の生成は期待できないが、宇宙線によるアミノ酸等の生成が可能であることが示唆された。
模擬タイタン大気への陽子線照射では気相中でもやが生じ,その加水分解でアミノ酸が生成した。タイタンでのアミノ酸前駆体の生成を考える場合,高層大気より,むしろ濃厚な下層大気中で宇宙線の作用による生成が重要であることが示唆された。