ロス海は世界最大の棚氷を有しているとともに、海底に着底した西南極氷床の主な流出経路である。西南極氷床は、全てが融解すると全球的な海水準を5m以上上昇させる可能性があり、現在進行中の温暖化によりその安定性が危惧されている。本研究では、ロス海の海底地形/地質調査を行うとともに、新しく特定有機化合物をつかったC-14年代測定を行った。過去の氷床縁辺変遷に関する正確な年代を得るとともに、これまでその挙動が明らかになっていなかった、棚氷の位置の特定を、大気上層で生成された宇宙船生成核種であるBe-10を使って復元した。その結果、ロス棚氷の崩壊が大規模かつ急激におよそ5,000年前というこれまでよりも10,000年もより現在に近い時期であったことが明らかになった。さらにこれまで謎であった西南極氷床コアの同位体による温度復元結果の場所による相違点について、統合的な説明を加えることに成功した。