情報地質
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論説
閉鎖性海域環境の経年変化抽出への時空間地球統計学の適用
小池 克明劉 春学田村 綾子
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2005 年 16 巻 1 号 p. 3-15

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抄録
環境悪化が顕在化している有明海の43測点において,1975~2000年の間に月1回の割合で得られた海面温度と4つの栄養塩濃度(NO2-N,NO3-N,NH4-N,PO4-P)のデータを解析対象とした.まず,時空間の実験セミバリオグラムのモデリング法として,平滑化3次スプラインを用いた修正多項式モデルを提案した.これを季節変化成分除去後の海面温度データ,および対数に変換した栄養塩濃度データに適用した結果,海面温度には時間と空間の両方向に明確な相関性が存在するのに対し,栄養塩濃度においては時間方向の相関性は微小であり,両者の相関構造の相違が明らかになった.また,空間方向の相関範囲はデータの種類によって異なり,海面温度が60 km程度と最も長く,栄養塩濃度は20~50 kmの範囲で得られた.次に,修正多項式によるセミバリオグラムモデルとオーディナリ・クリギングの適用性を評価するため,全測点で実測値と推定値とのクロス確認を行ったところ,相関係数は0.77~0.99の範囲で得られたので,推定精度は妥当であることが確かめられた.時空間分布推定の結果,海面温度は夏季と冬季で分布パターンが逆転すること,栄養塩の濃度分布はいずれも1年を通して湾奥で濃度が高いこと,夏季での濃度分布パターンは年によって大きく変わり得ること,および4成分ともに有明海全体で低い時期もあること,などの特徴が抽出できた.さらに,栄養塩濃度に加えて,硝化能力を評価するのに重要な濃度比の経年変化も明らかになった.
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© 日本情報地質学会
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