抄録
北海道北部中川地域の下部蝦夷層群最下部の礫岩層から大型有孔虫 Orbitolinaを含む石灰岩礫を発見した.礫岩層の産状から,石灰岩礫を含む礫岩層は深海域に流入した重力流堆積物であると判断される.石灰岩礫から産する Orbitolinaは後期Aptian~前期AlbianのO.(Mesorbitolina) parva - O.(Mesorbitolina)texana系列に同定される.本地域の下部蝦夷層群下部の年代がAptianとされていることから,この石灰岩礫を含む下部蝦夷層群最下部の年代は後期Aptianと考えられる.石灰岩礫中の微岩相・化石構成,および石灰岩形成年代は,夕張山地に分布するオリストストローム中の“オルビトリナ石灰岩”と一致し,後期Aptianの浅海石灰岩の形成とそれに引き続く深海域への再堆積が広域的な現象であったことを示唆する.