地質学雑誌
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論説
福島県,吾妻火山の最近7千年間の噴火史:吾妻-浄土平火山噴出物の層序とマグマ供給系
山元 孝広
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2005 年 111 巻 2 号 p. 94-110

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抄録

吾妻火山の最新の活動で形成された小富士や五色沼などの火口群を,吾妻-浄土平火山,その噴出物を吾妻-浄土平火山噴出物と呼び,その層序,形成年代,噴出量,化学組成を明らかにした.吾妻-浄土平火山噴出物は土壌層を挟んで大きく12ユニットに分けられ,安山岩質のブルカノ式降下堆積物を含むものが5ユニット(下位から桶沼,五色,小富士,一切経,大穴),水蒸気爆発降下堆積物のみからなるものが7ユニットである.桶沼ユニットでは6.7 kaに約5×10-4 DRE km3,五色沼ユニットでは6.3 kaに約3×10-4 DRE km3,小富士ユニットでは5.9~4.8 kaの期間に約4×10-1 DRE km3,一切経ユニットでは4.3 kaに約2×10-4 DRE km3,大穴ユニットでは0.6 kaに約8×10-5 DRE km3のマグマが噴出している.浄土平火山噴出物の本質物はSiO2含有量56.8~59.7 wt%の安山岩と60.7~62.8 wt%の灰色デイサイトからなり,各々の組成は噴出源によらず岩系ごとほぼ一貫した組成特性を示す.このことは火口群のマグマ供給系は約7千年間基本的に不変であり,ここから上昇したマグマが岩脈として側方に広がって,噴火ごとに噴出地点が異なったことを示唆している.

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© 2005 日本地質学会
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