2006 年 112 巻 11 号 p. 666-683
日高変成帯の中部に位置する野塚岳地域には,S・I-タイプトーナル岩とそれらに伴って産するはんれい岩~閃緑岩,ニオベツ岩体,野塚岳花崗岩および変成岩類が産する.S・I-タイプトーナル岩と変成岩類は日高変成帯の上昇に伴うマイロナイト化を被っている.一方,ニオベツ岩体と野塚岳花崗岩はマイロナイト化の後に貫入した.ニオベツ岩体はS-タイプトーナル岩起源の捕獲岩を含む.ニオベツ岩体に取り込まれたトーナル岩捕獲岩は部分溶融を起こした.Sr・Nd同位体比組成を含めた火成岩類の化学組成は,野塚岳花崗岩がトーナル岩捕獲岩の部分溶融によって生じたメルトとニオベツ岩体マグマの混合によって形成されたことを示す.日高変成帯からこれまで報告されている火成岩や変成岩の年代測定結果を考慮すると,ニオベツ岩体と野塚岳花崗岩は中新世における千島弧と東北日本弧の衝突に関連した火成活動の産物であると推察される.