抄録
鳥甲火山は,北部フォッサマグナ中央隆起帯北縁に位置し,カルクアルカリ系列安山岩~デイサイトよりなる.これらは,前倉ステージ噴出物と鳥甲火山噴出物ステージ1~3に区分され(五十嵐, 1992),前倉ステージ噴出物が3.2 Ma,鳥甲火山ステージ2噴出物が0.8 Maの年代値を示す(金子ほか, 1989).これら噴出物は,主に前倉ステージ噴出物が輝石安山岩溶岩・火砕岩,鳥甲火山ステージ1噴出物が輝石安山岩~黒雲母・角閃石デイサイト火砕流堆積物,ステージ2噴出物がカンラン石・輝石安山岩~角閃石・輝石デイサイト溶岩よりなり,ステージ1以降のものには,ハンレイ岩質捕獲岩,花崗岩質捕獲岩が包有される.
今回,それら火山噴出物の全岩化学組成,鉱物化学組成,Sr,Nd同位体化学組成を基に岩石学的な検討を行った.その結果,カルクアルカリ質安山岩~デイサイトよりなる鳥甲火山岩類は,内部混合作用は認められるが,主には3 kbar以浅のマグマ溜まり内での分別結晶作用により形成されたとの結論を得た.