113 巻 (2007) 12 号 p. 628-635
関東平野北西部の荒川中流域に分布する江南台地は,従来最終間氷期以降に形成された扇状地と考えられてきた.本研究では,江南台地の段丘礫層を覆う凝灰質粘土層中に1層のテフラ(江南テフラ)を認定し,記載岩石学的特徴からこのテフラが長野県北部の飯縄火山を給源とする飯縄西山テフラ群(In-Ny)の下部に対比されることを明らかにした.江南テフラは石英とカミングトン閃石に富み,特にカミングトン閃石の屈折率特性および主成分化学組成は給源付近におけるIn-Nyの下部のそれらとよく一致し,対比の根拠となる.In-Nyの噴出年代は,放射年代と上下の既知テフラとの層位関係から約180 kaと推定される.江南テフラが風成堆積物起源と考えられる凝灰質粘土層の基底に挟在することから,江南台地の形成年代はIn-Nyの年代で与えられ,MIS 7-6移行期と従来より古く見積もられる.それにより江南台地を変位させる江南断層の活動度は,0.06 m/kyと従来の4分の3に再評価される.