地質学雑誌
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論説
原生代末期-古生代前期における深海の酸化還元環境:57Feメスバウアー分光法による遠洋深海チャートの検討
佐藤 友彦磯崎 行雄松尾 基之
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2009 年 115 巻 8 号 p. 391-399

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抄録

地球史前半を通して還元的であった主要海洋の深海は,原生代末に酸化的になったと推定されるが,その程度や時期の詳細は不明であった.遠洋深海チャート中の含有鉄化学種を,57Feメスバウアー分光法を用いて同定し,堆積当時の海洋の酸化の程度を検討した.試料として,付加体中に産する,後期原生代末(英国・ウェールズ州),エディアカラ紀-カンブリア紀(ロシア・ゴルニアルタイ山地),オルドビス紀(カナダ・ニューファンドランド),そしてデボン紀(モンゴル・バヤンホンゴル地域)の遠洋深海チャートを用いた.測定した試料中には,主要な鉄鉱物として赤鉄鉱が含まれ,黄鉄鉱は欠如することを確認した.このことより,検討した遠洋深海チャートは全て,初生的にFe(III)/Fe(II)(水酸化鉄/溶存Fe2+境界)の酸化還元電位より酸化的な条件下で堆積・固結したと推定される.本結果は,遅くとも原生代末期には,主要海洋の深海が,酸化鉄の安定晶出を起こす程度に酸化的に変化していたことを示唆する.

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© 2009 日本地質学会
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