地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
論説
飛騨山脈の深成岩マグマの貫入時期とテクトニクス
−LA-ICP-MSによるジルコンのU-Pb年代測定法の適用−
伊藤 久敏田村 明弘森下 知晃荒井 章司
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 118 巻 7 号 p. 449-456

詳細
抄録

飛騨山脈のいくつかの深成岩に対し,LA-ICP-MSによるジルコンのU-Pb年代測定を行った.対象とした試料はIto and Tanaka(1999)により,高瀬川断層を挟んで冷却年代に顕著な差が見られた試料である.U-Pb年代測定の結果,高瀬川断層の西側に分布する奥黒部花崗岩で65.1 ± 1.6 Ma,同断層の東側に分布する大白沢花崗岩で64.7 ± 2.3 Maが得られたことから,両者は約65 Maのほぼ同時期に貫入したことが分った.大白沢花崗岩にはマイロナイト構造が認められ,2 Ma以降の急激な断層運動による隆起・削剥を反映したものと推定した.高瀬川断層の東側に分布する金沢花崗閃緑岩のU-Pb年代として2.15 ± 0.15 Maが得られ,同花崗閃緑岩は第四紀に貫入した深成岩であることが分った.飛騨山脈において,放射年代測定により確認された,地表に露出する第四紀の深成岩は,滝谷花崗閃緑岩についで二例目となる.

著者関連情報
© 2012 日本地質学会
前の記事
feedback
Top