2013 年 119 巻 10 号 p. 665-678
本研究では砂岩および緑色岩の全岩化学組成に基づき,後背地の構成要素および造構場の推定を試みた.その結果,伊平屋ユニットは陸弧・開析された島弧を後背地とすること,本部ユニットは異なる後背地に由来する堆積物が二次的に混合し,形成したことがそれぞれ示唆された.名護層,嘉陽層は大陸縁島弧から活動的大陸縁,陸弧・開析された島弧を後背地とし,両層の砂岩はNbの元素含有量で2つのグループに区分できることが明らかとなった.また,慶良間層は名護層と一連の地質体と考えられていたが,砂岩の化学組成は著しく異なっている.四万十帯相当層である名護層・嘉陽層の測定結果を四国西部に分布する四万十帯と比較すると,Sr,Ni,Crなどの含有量に相違が認められ,これは供給源に苦鉄質岩類が含まれることや,後背地の気候条件の相違に由来すると考えられる.