2018 年 124 巻 4 号 p. 271-296
岩手火山およびその周辺域における水蒸気噴火の発生履歴を解明するために,山麓部および登山道沿いでの詳細な地質調査に加え,14C年代測定および噴出物の構成物分析(特に,変質鉱物種分析)を行った.また,水蒸気噴火とマグマ噴火との関連性を検討するために,山麓部の火山灰層序を再確認しつつ,新たに年代測定を実施した.その結果,約8.4cal. ka以降の噴出物として,12ユニットの水蒸気噴火堆積物と,1ユニットの水蒸気噴火による火砕流あるいは熱水変質地域を源とする火山性流れ堆積物を認定した.約9千年前の大規模山体崩壊以降に発生した薬師岳のマグマ噴火と水蒸気噴火の時間的関連性については,両者が連続的に発生したイベントがある一方で,互いの休止期に発生するイベントもあり,一貫した関連性は確認できなかった.一方,数百~千年スケールでの活動推移に着目すると,爆発的マグマ噴火の活性期には水蒸気噴火の発生頻度が高まる傾向が認められる.