2020 年 126 巻 11 号 p. 621-630
室戸岬に分布する中期中新世の貫入岩群の方位から,貫入時の古応力の推定を試みた.ビシャゴ碆の整然層にみられるシート群に混合ビンガム分布法を適用し,単一のNW-SE方向に最小圧縮主応力軸を持つ応力を得た.室戸岬地域の地層は貫入岩の定置後に傾動を伴う変形があったことが明らかである.変形史を仮定して復元した応力の古方位は,最小主応力軸が鉛直に近い逆断層型応力であった.混在岩中に見られる同時期の貫入岩群の方位もまた,逆断層型応力での貫入を示唆している.中期中新世の西南日本前弧域は,浮揚性沈み込みの影響で圧縮場であったと想定されており,室戸岬地域の貫入岩の方位はこれと整合的である.