2020 年 126 巻 2 号 p. 85-93
東北日本の東縁に沿って分布する母体-松ヶ平帯中の古生代の年代を示す山上変成岩類は,高変成度の山上変成岩Ⅰと低変成度の山上変成岩Ⅱに区分されている.このうち,山上変成岩Ⅰは主に泥質片岩と角閃岩からなる.泥質片岩中のルチルにパラゴナイトが含まれることや変成鉱物の組成領域の検討から,山上変成岩Ⅰは蓮華帯の高変成度岩類と同等の低温高圧型変成作用を受けていると推定される.また,泥質片岩と角閃岩中のフェンジャイトK-Ar年代は322-287Maを示し,蓮華帯変成岩類と一致する.変成作用の特徴とフェンジャイトK-Ar年代から見て,山上変成岩類は西南日本の蓮華帯の高変成度岩類に直接対比できる可能性が高いと考えられる.