抄録
鹿児島県上甑島に位置する貝池は, 礫洲によって外海と隔てられた汽水湖である. 湖の表層水は陸水の影響を受け約20PSUの低塩分を呈するが, 水深約3m以深は礫洲を通した海水の侵入により30PSUを越える. このため湖水は恒常的な密度成層状態にあり, 水深5mから湖底までの溶存酸素量はOml/1を示した. 水深4.5~5.0m には光合成バクテリアと思われる微生物の濃密な分布が確認され, 堆積物最表層部分には繊維状の微生物による赤黒色のマットが形成されていることが明らかになった. 不撹乱採取された堆積物コアから, 厚さ1mm未満のマット状の構造が約3cm にわたり積層していることが確認された. これらのマットは赤黒色で繊維質, 青緑色で均質, 黄黒色で繊維質など, 各々の構造は異なる. また堆積物内部には細かいラミナが何枚も観察された. 今後の研究によって無酸素環境におけるバクテリア活動と, 形成されたマットが堆積物中に保存されていく過程の解明が期待される.