地質学雑誌
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チリ・パタゴニア・アンデス産閃長岩中のアルカリ長石の微細組織: 蝶組織
中野 聰志赤井 純治苣木 浅彦
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109 巻 (2003) 4 号 p. VII-VIII

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抄録

チリ共和国の最南端部・パタゴニア地域には、南部アンデス山脈の西側に沿って、中生代~新生代のバソリスが南北方向に続いている. その内側ほぼアルゼンチンとの国境沿いに、中新世の花崗岩質プルトン及び半深成岩が、点々と同じように南北方向に分布している(第1図). そのうちのパイネ国立公園に分布している花崗岩プルトンについては研究が進んでいる(Michael,1991)が、その南のバルマセーダ山の小岩体(第2図)についての詳細は不明である. そのバルマセーダ山東麓の船着き場近くから、閃長岩破片を採集した(第3図).
閃長岩中アルカリ長石は、肉眼的には、中心部の半透明部(黒味を帯びる)を周辺部の相対的に薄い不透明部(やや肌色を呈する)が、脈状に入りつつ包んでいるように見える(第4図). 顕微鏡で観察すると、アルカリ長石粒子は、ほぼ均質に見える領域(実際は、クリプトパーサイト)とパッチ状(モザイク状)マイクロパーサイトの領域からなっている. 中心部は前者が支配的であり、周辺部は後者が支配的である. 中心部の顕微鏡的には均質に見える部分には、注意深く観察するとスパイク状のものが並んでいる. これを、X線マイクロアナライザーで観察すると、その模様が鮮明に見えてくるので、スパイクのひとつひとつが蝶 (butterfly) の形をしていることがわかる(第5, 6, 7図). 蝶の中心に位置している丸い粒子は、元素マッピング(第7図)と電子顕微鏡観察の結果、螢石であると同定できた(Nakano et al. ,2002).
本来均質であったOr 35-40 Ab 64-59 An 1-1.5 程度のアルカリ長石が、離溶してクリプトパーサイトになり、さらにそれが螢石を中心にして粗大化した. パーサイト粗大化の初期記録が蝶組織であり、粗大化がさらに進むとパッチ状のマイクロパーサイトになる. クリプトパーサイト形成後、アルカリ長石中の弱線を通るfluid~solutionから螢石が沈澱したと考えられる. 問題は残るが、以上が、現在の長石研究の到達点から整理した蝶組織の形成過程である(Nakano et al. ,2002).

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