日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: T11-O-19
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T11(口頭).堆積地質学の最新研究
鹿児島県徳之島におけるカスケード型トゥファと石筍を用いた過去200年間の古気候解析
*村田 彬加藤 大和狩野 彰宏
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キーワード: トゥファ, 石筍, 古気候
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抄録

石灰岩地帯の河川で堆積するトゥファは炭酸カルシウムを主成分とし、年縞を持つことから、高解像度の古気候記録媒体として期待されている(Kano et al., 2003; Kawai et al., 2006)。しかし、河川で発達するトゥファを対象とした研究では、トゥファの堆積に伴う流路変化によって記録が数十年を超えず、断続的になるという問題点が指摘されていた。一方で、滝から流れ落ちた水によって同じ地点でマウンド状に形成されるカスケード型トゥファは、石筍のように長期間かつ連続的な記録を保持すると期待される。

本研究では、鹿児島県徳之島の小原海岸に広く発達するカスケード型トゥファを対象とした。連続堆積が期待できるサンプルを2地点から採取し、内部に形成された年縞を詳細に観察することで堆積期間を217年(Site 2, 長さ20 cm)、192年(Site 3, 長さ50 cm)であると決定した。その上で、酸素・炭素同位体分析を行った。

また、小原海岸から北東1 kmほどに位置する小島鍾乳洞からは長さ15 cmの石筍を採取した。内部に発達する年縞とU-Th年代から、約140年間の記録を持つことが確認された。

トゥファの酸素同位体比は2地点で一致した変動を示し、約20年の周期性を持っていた。また、石筍とトゥファの酸素同位体比は変動パターンが異なり、石筍の方が明らかに高い値を示した。これは、洞窟内の気温が外気温に比べて一年を通した変化が小さく、特に夏季の気温が低いことを反映している。今後、雨水記録や継続的なデータ採取、凝集同位体比の活用などから詳細な古気候の解釈へとつなげていく。

Kano, A., Matsuoka, J., Kojo, T., & Fujii, H. (2003). Origin of annual laminations in tufa deposits, southwest Japan. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 191(2), 243–262. https://doi.org/10.1016/0031-0182(02)00717-4

Kawai, T., Kano, A., Matsuoka, J., & Ihara, T. (2006). Seasonal variation in water chemistry and depositional processes in a tufa-bearing stream in SW-Japan, based on 5 years of monthly observations. Chemical Geology, 232(1–2), 33–53. https://doi.org/10.1016/j.chemgeo.2006.02.011

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© 2022 日本地質学会
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