日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
錠剤の大きさが虚弱高齢者の服薬に与える影響―服薬模擬調査による検討―
三浦 宏子苅安 誠
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2007 年 44 巻 5 号 p. 627-633

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抄録

目的:虚弱高齢者の服薬状況についての報告は少なく,嚥下機能の低下と服薬との直接な関連性については十分に明らかになっていない.そこで,本研究では,虚弱高齢者に対して服薬模擬調査を行い,大きさの異なる各錠剤の服用時において,嚥下機能の低下が服薬行動に与える影響を調べた.併せて,錠剤サイズと取り扱い作業時間との関連性についても調べた.方法:被験者は,虚弱高齢者73名である.この被験者に対して,ADL20を用いた日常生活機能評価,反復唾液嚥下テスト(RSST)を用いた嚥下機能評価,ならびに服薬模擬場面を設定した実地調査を実施した.実地調査においては,直径が異なる5種のサンプル錠(6mm,7mm,8mm,9mm,10mm)を用いて,錠剤を口に含む手前までの動作を被験者にしてもらい,その際の飲み込みやすさと取り扱い性について主観的評価を行うとともに,取り扱い作業時間を計測した.結果:嚥下機能低下群と正常群において,各錠剤サイズ3錠のサンプル錠を用いて,服薬動作の比較を行ったところ,10mm以外の錠剤サイズにおいて,嚥下機能と服薬分割回数の間に有意な関連性が認められ(p<0.05),低下群では錠剤を複数回に分けて服用する傾向がみられた.また,すべての錠剤サイズにおいて,ADLと模擬動作における錠剤の取り扱いに要した時間との間に有意な関連性が認められた(p<0.01).次に,飲み込みやすさと取り扱い性の両者を考慮して,最も処方薬として至適であると感じた錠剤サイズとして7mmを選択した者が30.1%,8mmを選択した者が28.8%であった.また,最も好ましくないと感じた錠剤サイズとして,10mmを選択した者が61.6%,6mmを選択した者が28.8%であった.結論:虚弱高齢者の嚥下機能とADLの低下は,服薬行動と密接な関連性を示した.また,虚弱高齢者の服薬に適した錠剤サイズは7∼8mmであることが示唆された.

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© 2007 一般社団法人 日本老年医学会
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