日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
Quality of life評価手法としての日本語版認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping:DCM)の検討:Well-being and Ill-being Value(WIB値)に関する信頼性・妥当性
鈴木 みずえ水野 裕Brooker Dawn住垣 千恵子坂本 凉子内田 敦子グライナー 智恵子大城 一金森 雅夫
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2008 年 45 巻 1 号 p. 68-76

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抄録

目的:認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping:DCM)は,認知症のケアの質の改善を目的とした行動観察手法としてわが国にも導入されたが,日本語版DCMの信頼性,妥当性については検証されていない.本研究の目的は,Quality of life評価手法でもある日本語版DCMのWell-being and ill-being Value(WIB値)の信頼性と妥当性を検証することである.方法:平成17年4月1日∼平成18年6月30日にデイケア,グループホーム,療養型病床群に入院する認知症と診断された130名(男性31名,女性99名,平均年齢82.65±7.69歳)を対象とし,同席法による評価者間一致率と再検査法により信頼性を,Japanese Quality of life inventory for elderly with dementia(QOL-D)との相関により基準関連妥当性を検証した.結果:対象者はアルツハイマー型認知症49名(37.7%),脳血管性認知症80名(61.53%),レビー小体型認知症1名であった.WIB値を用いて評価者間の一致率として算出した級内相関係数の平均値は0.813(±0.052),1週間後の再テストの相関係数は0.836(p=0.001)であった.基準関連妥当性に関しては,日本語版DCMとQOL-Dの下位尺度の相関係数を算出した結果,0.53以上の有意な正の相関が認められた.日本語版DCMの内的一貫性に関してはWIB値,BCCカテゴリーの積極的交流,消極的交流を用いたが,良好な有意な関係を示していた.結論:本研究の結果,日本語版DCMのWIB値はオリジナルのWIB値と同様の信頼性,妥当性があることが明らかになり,わが国の認知症高齢者に対しても使用が可能であることが示唆された.

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© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
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