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日本老年医学会雑誌
Vol. 50 (2013) No. 3 p. 409-412

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http://doi.org/10.3143/geriatrics.50.409

症例報告

89歳,女性,胃潰瘍からの急性出血により大球性貧血をきたし,また心不全症状を呈していたが,薬物治療のみで急速に改善した症例を報告する.患者は65歳時に高血圧と診断されサイアザイド系利尿薬,β遮断薬やCa拮抗薬の3剤の降圧薬により血圧は安定していた.胃出血の6カ月前の血液検査ではヘモグロビン(Hb)14.2 g/dl,平均赤血球容積(MCV)97 flであった.胃出血によるタール便はあったが平常の生活を送っており,その6日後の血液検査でHb 8.4 g/dl,MCV 103 flの大球性貧血が発見され翌日入院となった.入院時の胃内視鏡検査では出血を認めなかったが活動期(A2期)であり,貧血は胃潰瘍からの出血によるものと診断した.また軽度の下腿浮腫と両肺野に少量の胸水貯留があり,心エコー上著明な左室拡張障害はなく心機能は正常であったため急性高心拍出量性心不全と考えられた.直ちに鉄剤,利尿薬,プロトンポンプ阻害薬で治療したところ貧血は急速に回復して1週間後にはHb 10.5 g/dl,MCV 106 flになり,網状赤血球増加とともに血小板も一過性の増加を認めた.タール便があってから約1カ月後にはHb 14.5 g/dl,MCV 99 flと何れも正常値に回復した.また貧血の改善とともに心不全症状も速やかに軽快した.本症例は急性出血後に大球性貧血となり,輸血を行うことなく貧血が全快するまで薬物治療のみでこれらの病態の全経過を観察し得た貴重な症例であるので報告した.少なくとも得られた検査結果からは高度の拡張障害の存在は考え難く,代償性に心拍出量が増大して高心拍出量性心不全を呈したと考えられた.

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