日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
甲状腺癌との鑑別が困難であった高齢者甲状腺結核の1例
新谷 哲司河本 絵里子渡部 さやか坂尾 ひとみ眞鍋 健一小川 明子古川 慎哉
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2014 年 51 巻 6 号 p. 586-590

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抄録
症例は76歳,女性.これまでに結核の既往はない.10年前より近医にて慢性糸球体腎炎,高血圧と診断され治療を受けていた.しかし,徐々に腎機能が悪化し当院内科を紹介された.腎不全に対して保存的治療を行っていたが尿毒症症状が出現し内シャント造設,透析導入目的にて入院となった.二次性副甲状腺機能亢進症のスクリーニング目的に実施した甲状腺超音波検査にて,甲状腺に一部石灰化を伴う腫瘤及び多数の頸部リンパ節腫脹がみられた.甲状腺癌が疑われたため穿刺吸引細胞診を実施したが少数の濾胞上皮細胞を認めるのみで悪性所見は認めなかった.しかし,画像所見より甲状腺癌が強く疑われたために甲状腺全摘,両側頸部リンパ節郭清手術を行った.術後病理検査の結果,甲状腺右葉全体に類上皮細胞肉芽腫が認められ,リンパ節でも同様の所見が得られたために甲状腺結核と診断した.わが国における結核罹患率は欧米と比較すると依然高く重要な疾患の一つであるが,甲状腺結核は非常に稀である.近年報告された甲状腺結核は,従来と比べて有意に高齢化している.特に高齢者においては,結核既往歴のある場合には当然ながら,既往がない場合においても,通常の穿刺吸引細胞診で確定診断に至らない甲状腺腫瘍をみた場合には甲状腺結核も念頭に置いておくべきである.
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© 2014 一般社団法人 日本老年医学会
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