日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
終末期医療に関する事前の希望伝達の実態とその背景
島田 千穂中里 和弘荒井 和子会田 薫子清水 哲郎鶴若 麻理石崎 達郎高橋 龍太郎
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2015 年 52 巻 1 号 p. 79-85

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抄録

目的:終末期医療について社会的関心が向けられる中,高齢患者は,事前に終末期医療の希望についてどのように伝達しているであろうか.事前の希望伝達の状況把握と関連要因を明らかにすることによって,終末期医療の希望伝達の背景を分析することを目的とした.方法:東京都の高齢者急性期病院の外来通院患者を対象とした.2012年3月後半の6日間の通院患者のうち,同意が得られた968名を対象とした.調査票の内容は,終末期医療に関する家族とのコミュニケーションの状況,終末期を想定した代理決定者,延命医療,人工栄養の希望,死に対する態度であった.結果:平均年齢は76.5歳,女性が69.3%,学歴は高卒以下が65.6%を占めた.配偶者との死別経験のある者は31.4%であった.終末期医療の希望伝達について会話及び記録の有無で聞いたところ,『会話・記録両方あり』は10.0%,『会話・記録両方なし』は47.6%,『会話有・記録無』は39.0%であった.このうち『会話有・記録無』を基準カテゴリーとした多項ロジスティック回帰分析を行った結果,『会話・記録両方あり』で有意な関連がみられたのは「終末期を想定した代理決定者あり」(オッズ比2.52)で,代理決定者を決めている場合に高い確率で記録されていた.『会話・記録両方なし』では,人工栄養を希望しない(オッズ比0.68),代理決定者あり(0.37),死への関心あり(0.57)で有意に関連していた.人工栄養を希望せず,自分が終末期になった場合の代理決定者が決まっており,死への関心があり,死について考えることを回避しないことが会話の確率を高めていた.結論:終末期医療の希望に関する伝達は,記録より会話による方法をとることが多く,終末期医療の意思決定を委ねる人を決めている方が会話も記録もあることが示された.また,終末期医療の希望の記録と会話は,それぞれ背景要因が異なる可能性が示唆された.

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© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
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