日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
超高齢発症Guillain-Barré症候群90歳男性の1例
高吉 宏幸中寺 由貴枝中川 知憲門田 勝彦安部 哲史三瀧 真悟山口 修平
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2015 年 52 巻 4 号 p. 425-428

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抄録

症例は90歳男性.20年前からII型糖尿病に対して経口血糖降下薬服用.2014年6月4日午後突然両側上肢脱力を自覚.翌朝両下肢にも脱力が出現した.脳梗塞の既往がありD-dimer上昇が見られたことから虚血性脳血管障害を疑ったが,MRIにて頸髄に圧迫性脊髄症を疑う所見も認めたため入院した.入院翌日の髄液検査で軽度の蛋白細胞解離,神経伝導速度検査では糖尿病性ニューロパチーに矛盾しない結果であった.緩徐であるが,日の単位で四肢麻痺が進行しGuillain-Barré症候群と診断した.MRIを再検し頭蓋内及び頸髄に梗塞の出現なく圧迫の程度も変化がないことから,第5病日より大量γグロブリン療法を開始した.一時四肢MMT2まで低下したが,グロブリン投与1週間でMMT4~5に改善,2週間後には歩行可能となった.経過中深部腱反射は消失した.本例の神経伝導速度検査は軸索障害が主体であり初診時には糖尿病性ニューロパチーと区別がつかなかった.高齢者では複数の合併症を有し,訴えと症状は必ずしも単一疾患で説明がつかないこともあり鑑別に苦慮することが多い.Guillain-Barré症候群は治療可能な疾患であり高齢者の四肢麻痺において常に考慮する必要がある.

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© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
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