日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
化粧ケアが地域在住高齢者の主観的健康感へ及ぼす効果―傾向スコア法による検証―
河合 恒猪股 高志大塚 理加杉山 陽一平野 浩彦大渕 修一
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2016 年 53 巻 2 号 p. 123-132

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抄録

目的:健康寿命の延伸には主観的健康感の維持向上が重要である.化粧ケアは従来研究において少数症例では高齢者の主観的健康感を高める可能性が示唆されていた.本研究では,化粧ケアの地域在住高齢者の主観的健康感への効果を,包括的健診を活用した傾向スコア法による擬似的無作為化比較対照試験にて検討した.方法:東京都板橋区の9地区在住の65歳以上の地域在住高齢者全員7,737名に対して,化粧ケアプログラム参加者募集案内を送付し,参加者を募った.113名が月2回3カ月間(全6回)の美容教室と日々のスキンケアによる化粧ケアプログラムに参加した(介入群).一方,地域在住高齢者から包括的健診参加者を募集し759名が参加した.このうち,化粧ケアプログラム不参加者で3カ月後の事後アンケートに回答した576名から,参加者と同じ背景要因を持つ対照群を,包括的健診で採取した性,年齢,BMI,飲酒の有無,脳卒中,心臓病,糖尿病の既往,基本チェックリスト該当数,握力,通常歩行,骨格筋量,骨密度,趣味やけいこごとの有無を共変量とした傾向スコアマッチングにより抽出した.そして,介入群と対照群における化粧プログラム参加後の主観的健康感,抑うつ傾向,外出頻度を比較した.結果:介入後の主観的健康感は,介入群で維持する傾向が見られた.抑うつ度の指標であるSDS(self-rating depression scale)の介入後の平均点は,介入群32.7点に対して対照群では35.3点で,介入群で有意に改善した.一方,対照群では変化しなかった.外出頻度は,対照群では有意に低下した.結論:化粧ケアは,地域在住高齢者の主観的健康感,抑うつ傾向を維持改善する効果があることが示され,健康寿命の延伸に有効なプログラムであることが示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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