日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
口腔ケア時の誤嚥予防の試み―口腔ケア用ジェルの新規開発―
守谷 恵未松山 美和犬飼 順子道脇 幸博岩渕 博史小笠原 正松尾 浩一郎角 保徳
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2016 年 53 巻 4 号 p. 347-353

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抄録

目的:口腔細菌は,誤嚥性肺炎を含めた全身の疾患と密接に関係していると考えられている.誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが極めて重要であるが,その方法は施設や術者により様々であり,中には誤嚥のリスクを伴う口腔ケア方法も存在する.口腔ケア中の誤嚥性肺炎起炎菌を含む洗浄水の誤嚥のリスクを低下させるため,本研究では,水を使わない口腔ケアに必要かつ適正な物性を持つジェルを開発し,その物性およびプラークの除去,咽頭への流入しにくさについて評価・検討を行った.方法:ジェルの物性評価は,医療従事者31名を評価者とし,VASを用いた主観的物性評価と口腔内官能評価から,試作ジェル3種類(A~C)と市販の保湿ジェル3種類(D~F)を比較した.プラーク除去効果の評価は,健常者20名を対象とし,物性評価において最も評価が高かったジェルをジェル使用時,水道水を水使用時とし,歯科衛生士によるブラッシングにより評価を行った.評価はModified PCRを用い,ブラッシング前後のプラークの減少率を比較した.また,ブラッシング時の吸引回数をカウントし,咽頭への流入しにくさについてジェル使用時と水使用時における差を評価した.結果:物性評価において,試作ジェルBはその他5種類のジェルに比べ,有意に評価が高かった.プラークの除去効果において,Modified PCRの減少率はジェル使用時の方が水使用時よりも有意に高かった.また,吸引回数はジェル使用時の方が有意に少なかった.結論:新規に開発した試作品ジェルBは物性評価にて良好な結果を得た.さらにプラークの除去効果や咽頭への流入しにくさにて有効性を確認した.洗浄水ではなくジェルBを使用することにより口腔ケア時に流入しにくくなる可能性があるため,今後の臨床試験に期待したい.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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