日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
日本の地域在住高齢者における栄養状態とサルコペニア重症度の関連性の検討―BMI,Alb,体重減少の有無との関連―
駒井 さつき渡邊 裕藤原 佳典金 憲経枝広 あや子河合 恒吉田 英世大渕 修一田中 弥生平野 浩彦
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2016 年 53 巻 4 号 p. 387-395

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抄録

目的:地域在住高齢者における栄養評価指標(BMI,Alb,体重減少の有無)とサルコペニア重症度との関連について,その分布状況を明らかにすること.方法:対象者は,2013年包括的健診に参加した65歳以上の地域在住高齢者758名.長寿医療制度(後期高齢者医療制度)に準じ75歳をカットオフ値として2群に分類した.調査項目は,基本属性(性別,年齢,MMSE,基本チェックリスト,老研式活動指標),身体計測(身長,体重,体脂肪率,四肢骨格筋量),運動機能評価(握力,歩行速度),血液生化学検査(Alb,Cr,HbA1c,HDL-chol,Hb,Ht).四肢筋肉量の測定にはBIA法(InBody720(Bio Space社製))を用い四肢SMIを算出した.対象者は,栄養状態の評価指標としてBMI,Alb,「6カ月間で2~3 kgの体重減少の有無」を用いた.BMIはBMI判定基準分類に基づき3群に分類し(以下BMI 3群:<18.5;低体重群,18.5~25.0;普通体重群,>25.0;肥満群),Albは,3.8 g/dLをカットオフ値として2群に分類(以下Alb 2群:Alb高値群,Alb低値群),体重減少の有無は基本チェックリスト「11.6カ月間で2~3 kg以上の体重減少はありましたか.」より2群に分類し検討を行った(以下 体重減少2群:体重減少なし群,体重減少あり群).サルコペニア重症度の分類は,European Working Group on Sarcopenia in Old People(EWGSOP)の診断概念に基づき,カットオフ値はAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)に準じ4群に分類した(以下サルコ4群:non- 群,pre- 群,sarco- 群,severe- 群).結果:サルコペニアの出現頻度は,男性ではsarco- 群5.6%(n=18),severe- 群1.2%(n=4)であり,女性ではsarco- 群7.8%(n=34),severe- 群1.6%(n=7)であった.BMI 3群別のサルコ4群の分布状況では,後期高齢者の普通体重群(BMI 18.5~25.0)においてsarco- 群が10.4~15.6%存在し,特に女性後期高齢者では肥満群(BMI>25.0)においてもsarco- 群が5.7%(n=2),severe- 群が2.9%(n=1)存在することが明らかとなった.また,Albの水準によりサルコペニア重症度の分布に影響は認められず,体重減少の有無においては男性後期高齢者においてのみ関連が認められ,体重減少あり群は男女ともBMI 18.5 kg/m2ならびにAlb 3.8 g/dL以上に80.0%以上出現していた.結論:後期高齢者では,普通体重群においてもsarco- 群とsevere- 群が存在し,特に女性後期高齢者においては,肥満群においても存在していた.Albの水準によりサルコペニア重症度の分布状況に影響は認められず,体重減少の有無との検討においては男性後期高齢者においてのみ関連が認められた.体重減少あり群はBMI 18.5 kg/m2ならびにAlb 3.8 g/dL以上にも存在し,BMIとAlb,体重減少の有無による栄養状態の評価だけでは低栄養高齢者,サルコペニア高齢者を十分にスクリーニングできないことが示された.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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