目的:要介護認定を受けていない地域高齢者を対象に認知機能低下の有無と身体活動,座位時間,社会参加活動の有無との関連について横断データを用い男女別に検討した.方法:地域在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1,133名を対象に,郵送法による質問紙調査を実施した.調査対象者1,133名のうち,調査項目に欠損のない有効回答者929名(有効回答率82.0%)を解析対象者とした.認知機能低下と身体活動,座位時間,社会参加活動との関連を検討するため,ロジスティック回帰分析を男女別に実施した.解析においては3段階のモデルを踏まえて行った.モデルIでは調整変数を投入せずに解析し,モデルIIでは年齢,最終学歴,飲酒状況,喫煙状況を調整変数として投入した.さらに,モデルIIIではモデルIIの調整変数に抑うつを加えて検討した.結果:男性の32.9%,女性の26.4%が認知機能低下を有していた.ロジスティック回帰分析の結果,男性においては,社会参加活動はモデルIおよびモデルIIで有意な関連が認められたが,モデルIIIでは有意な関連がみられなかった.社会参加活動の内容においては地域組織活動と政治経済活動がモデルI,IIで有意な関連が認められた.一方,女性においては,身体活動はモデルIでは有意な関連が認められたが,モデルII,IIIでは有意な関係は認められなかった.社会参加活動はモデルI,IIで有意な関連が認められたが,モデルIIIでは有意な関係は認められなかった.社会参加活動内容はボランティア活動がいずれのモデルにおいても有意な関連が認められた.結論:本研究の結果から,女性のボランティア活動がいずれのモデルにおいても有意な関連が示された.今後は本結果を踏まえ,抑うつ状態を考慮した上で社会参加を促す認知症予防プログラムの開発が望まれる.