日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
急性期病院内科に入院した高齢者患者の生命予後を栄養評価ツールCONUTを用いて検討
庭野 元孝
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2017 年 54 巻 3 号 p. 356-363

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抄録

目的:血清アルブミン値,末梢血総リンパ球数,総コレステロール値をスコア化して算出したものが,栄養評価ツールCONUTである.在院死患者と退院患者の二群のCONUT値,血清アルブミン値・末梢血総リンパ球数・総コレステロール値の4スコアを分析して,それらが高齢者患者の生命予後予測の一助になるかどうかを検討した.方法:2013年1月から4年間,65歳以上の高齢者患者で,SGAで栄養不良と評価されてNSTが介入した患者のうち,退院前10日以内にCONUT算出に必要な血清アルブミン値,末梢血総リンパ球数,総コレステロール値を測定していた患者は229人.同時期に内科入院して在院死した患者のうち,3つを死亡10日以内に測定していた患者は364人で,前者を退院群,後者を在院死群と名づけた.退院群と在院死群のCONUT値を算出して栄養不良レベルを比較,退院群のAHNの割合と種類を検討.さらに両群の血清アルブミン値・末梢血総リンパ球数・総コレステロール値の各スコアを単独で比較して,退院群のAHNの割合を検討した.結果:当院の対象患者に90歳以上の患者が多いことがひとつの特徴で,CONUT値,血清アルブミン値・末梢血総リンパ球数・総コレステロール値の各スコアの比較では,アルブミン値を除く3スコアで,退院群と在院死群の中等度栄養不良で,統計学的有意差を認めなかったが,正常,軽度・高度栄養不良で,有意差を認めた.特に血清アルブミン値が2.0 g/dl以下では在院死率が非常に高く,CONUTでのAHN移行率は,栄養レベル正常で37.0%,軽度栄養不良以上で5割を超えていた.結論:退院群と在院死群のCONUT値,血清アルブミン値・末梢血総リンパ球数・総コレステロール値の各スコアを比較したが,4スコアすべてで,高度栄養不良患者の在院死の比率が有意に高く,中等度不良では,アルブミン値を除く3スコアで有意差を認めなかった.退院群のCONUTでは,軽度栄養不良以上でAHN移行率が5割を超えており,上記4スコアは,生命予後を占う一助になると考えられた.

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