日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
アルギン酸ナトリウムを含有する流動食で経腸栄養を再開した内視鏡的乳頭切開術後出血の1例
明石 哲郎松本 一秀橋本 理沙鯉川 直美山田 正紀清水 純子掛川 ちさと中村 麻里熊本 チエ子
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2017 年 54 巻 4 号 p. 573-580

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抄録

高齢者では,嚥下機能障害のため経腸栄養を行うことも多い.また総胆管結石は高齢者に多い疾患で,経腸栄養施行中に内視鏡治療を行う場面も少なくない.偶発症として消化管出血を来す場合もあり,その後の経腸栄養再開は慎重に行う必要がある.今回,内視鏡的乳頭切開術後出血の内視鏡的止血術後にアルギン酸ナトリウムが含有された流動食であるマーメッドプラスを用い,経腸栄養を再開し,良好な経過をえた症例を経験したので報告する.症例は88歳,女性.脳梗塞後のリハビリテーション中に胆管結石性胆管炎を発症し,入院となった.2病日に内視鏡的乳頭切開術,内視鏡的胆道ドレナージ術を施行し,胆管炎は軽快した.覚醒度が不安定で,嚥下機能が安定せず,4病日より経鼻胃管よりグルタミン製剤を開始し,6病日より流動食を開始した.7病日に貧血が進行し,黒色便を認め,プロトンポンプ阻害薬の経静脈投与を開始した.8病日に乳頭近傍の潰瘍に内視鏡的止血術を施行した.経腸栄養の再開に際し,10病日よりアルギン酸ナトリウムの粘膜保護作用に注目し,マーメッドプラスを開始した.再出血なく経過し,13病日の内視鏡では乳頭近傍は固化された流動食で被覆され,潰瘍は治癒していた.19病日に再度,内視鏡的に截石術を行い,嚥下訓練,リハビリテーションを行いながら順調に経過し,26病日にはソフト食を経口摂取可能となった.経腸栄養施行中は消化管粘膜障害が懸念される状況も多いと考えられ,その際の流動食の選択において,食物繊維としてアルギン酸ナトリウムが含有されている本流動食は,使用しやすい流動食であり,経腸栄養の遅延のない再開に有用であると考えられた.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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