サルコペニア(sarcopenia)は,加齢に伴うさまざまな要因により,骨格筋蛋タンパクの合成と分解のアンバランス,筋肉修復能低下などが生じることより発症すると考えているが,その詳細に関して多くは不明である.サルコペニアをはじめとした骨格筋萎縮と機能低下の臨床的重要性が認知されつつあるとともに,骨格筋疾患に関する研究も新たな転換期を迎えている.加齢に伴う骨格筋の形態ならびに機能的変化に基づいたオリジナリティーの高い基礎研究が続々と発表され,従来では考えもし得なかった目覚しい発展を遂げている状況である.加齢による骨格筋疾患(サルコペニア)には骨格筋障害を伴っていることがしばしば多く,治療には骨格筋障害へのアプローチが必要である.サルコペニアの発症機序は多因子である.サルコペニア発症・進展プロセスにおいて骨格筋リモデリングと再生不全は重要であり,蛋白質分解システムの異常,そしてタンパク質合成と分解のアンバランスや骨格筋幹細胞の機能不全など様々な要因が関わっている.本稿では,プロテアーゼ·細胞外マトリックス代謝異常,骨格筋タンパク質合成と分解のアンバランス,骨格筋幹細胞老化・機能不全,炎症亢進,骨格筋細胞増殖とアポトーシスアンバランスならびにミトコンドリア機能不全の多方面から前3者に焦点を当てて,本研究グループの研究成果を交えてサルコペニアの新たな分子機構に関する最近の知見について概説する.