日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
潜伏感染III型のEBウイルスが発症に寄与したと思われる膿胸関連リンパ腫の1例
千丈 創盛 暁生金谷 穣泉山 康岡田 耕平竹薮 公洋飛岡 弘敏斉藤 誠田中 雅則豊嶋 崇徳森岡 正信
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2018 年 55 巻 1 号 p. 143-147

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抄録

膿胸関連リンパ腫(pyothorax-associated lymphoma;PAL)は,結核性胸膜炎や肺結核症に対する人工気胸術後の患者が,数十年後に膿胸腔に隣接して発症する悪性リンパ腫である.人工気胸術は1950年代から施行されなくなっており,膿胸関連リンパ腫患者は今後減少していくと考える.今回,われわれは人工気胸術から67年後に発症し,潜伏感染III型EBウイルスの関連が強く示唆されたPALの1例を経験した.人工気胸術の既往がある患者に胸部症状が認められる場合,依然として膿胸関連リンパ腫を念頭に入れる必要があることを示す貴重な症例として,文献的考察を加えて報告する.症例は84歳男性.1950年に肺結核に対し人工気胸術を施行された.2017年2月中旬より右胸部痛が出現し,近医を受診した.胸部単純写真にて浸潤影を認め,胸部単純CTで右胸壁,右肺底部,下大静脈背側に腫瘤陰影を認めた.18FDG-PETで同部に一致して高集積を認めた.このため右胸壁腫瘤に対しCTガイド下で経皮生検を施行し,病理組織学的にびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(Diffuse large B-cell Lymphoma;DLBCL)と診断された.3月某日に精査加療目的で当院入院した.入院時血液検査で血清EBV-DNAが33,000 copies/mlと著明に高値であり,腫瘤検体に対する追加の免疫染色でEBNA-2陽性の腫瘍細胞をびまん性に認め,LMP-1陽性の腫瘍細胞を少数認めたことから,EBウイルス潜伏感染III型による膿胸関連リンパ腫の診断に至った.DLBCLに対しR-THP-COP,BRによる化学療法を施行し,血清EBV-DNAの著明な減少を認めたが,全身状態の悪化から治療継続困難となり,化学療法を中止し緩和的治療へと変更した.

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© 2018 一般社団法人 日本老年医学会
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