日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
訪問入浴介護サービスの利用者実態と看護師の入浴可否判断に影響を及ぼす入浴中止要因の検討
平 和也板谷 智也神出 計伊藤 美樹子
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2019 年 56 巻 1 号 p. 51-58

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抄録

目的:訪問入浴は,看護師1名以上,介護職員2名以上で提供され,看護師は入浴の前後のバイタルサインの測定や入浴前後の処置及び入浴の可否判断等を行っている.しかし,現状では利用者の身体状況や医療的ニーズの実態は明らかにはなっておらず,入浴可否判断のための指針も整備されていない.そのため,訪問入浴の利用者の医療的ニーズの実態を明確にし,看護師同行の必要性について考察すること及び入浴中止判断の基準を検討するうえでの示唆を得ることを目的とした.方法:訪問入浴を提供しているA社の協力を得て全国の274事業所を通じて利用者へ無記名自記式質問紙の配布,郵送法にて大学宛に返送してもらい660件の回答を得た(回収率:40.1%).利用者の要介護度や既往歴,身体状況や医療機器の使用と訪問入浴中止を把握し,訪問入浴中止の有無を従属変数とし,要介護度,高血圧の既往,吸引器の使用,ストーマの使用,疼痛,浴前処置を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った.結果:利用者の要介護者は平均年齢82.1±12.1歳,要介護度3以上が88.3%であり,医療機器や装着器具の使用,褥瘡や拘縮等の医療的ニーズの高い身体状態にある利用者が93.3%であった.また,訪問入浴中止の有無に対しては,疼痛(OR=1.87,p=0.0010)や浴前処置(OR=1.93,p=0.004)があること,要介護度(OR=1.19,p=0.047)の高さが有意であった.結論:訪問入浴の利用者は要介護度の高さだけでなく,疼痛の有無,浴前処置などへの対処が必要であり医療依存度が高い実態が明らかになった.

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© 2019 一般社団法人 日本老年医学会
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