日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
入院心疾患患者のサルコペニアを判定するための5回立ち座りテストの有用性
志堅原 隆広石山 大介堅田 紘頌佐々木 祥太郎畑中 康志小山 真吾多田 実加最上谷 拓磨松永 優子石森 光一松下 和彦
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2019 年 56 巻 2 号 p. 181-187

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抄録

目的:本研究の目的は,5回立ち座りテストを用いて入院心疾患患者のサルコペニアの有無を判定するための基準値を明らかにすることである.方法:対象は,2015年4月から2016年3月に入院した65歳以上の心疾患患者71名(平均年齢78.0±7.9歳,女性42.3%)とした.調査項目は,サルコペニアの有無と5回立ち座りテストとした.サルコペニアは,Asian Working Group for Sarcopeniaのアルゴリズムにしたがって評価した.統計解析は,サルコペニアの有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を実施した.独立変数は,5回立ち座りテストとし,共変量は,年齢,入院契機病名,New York Heart Association分類,Charlson併存疾患指数,細胞外水分比とした.また,サルコペニアを判定するための5回立ち座りテストのカットオフ値については,Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いて算出した.統計学的有意水準は5%とした.結果:サルコペニアと判定された対象者は25名(35.2%)であった.多変量ロジスティック回帰分析の結果,5回立ち座りテストは,サルコペニアの有無に対して有意な関連を認め,単位変化量を1.0秒としたときのオッズ比(95%信頼区間)は,1.31(1.04~1.65)であった(P=0.024).また,ROC曲線によって算出された5回立ち座りテストのカットオフ値は10.9秒であり,その感度は80.0%,特異度は70.0%,曲線下面積は0.83であった.結語:入院心疾患患者におけるサルコペニアは,5回立ち座りテストによって判定できる可能性が示唆され,そのカットオフ値は10.9秒であった.

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© 2019 一般社団法人 日本老年医学会
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