日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢糖尿病患者におけるサルコペニア肥満と左室拡張障害との関連性
井田 諭村田 和也今高 加奈子金児 竜太郎藤原 僚子高橋 宏佳
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2019 年 56 巻 3 号 p. 290-300

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抄録

目的:高齢糖尿病患者における肥満,サルコペニア,及びサルコペニア肥満と左室拡張障害(Left ventricular diastolic dysfunction:LVDD)との関連性を検討すること.方法:対象は伊勢赤十字病院,外来通院中の65歳以上の糖尿病患者とした.LVDDの評価には,左室拡張早期流入速度(E)を拡張早期僧房弁輪部移動速度(E')で除した値(E/E')を用いた.サルコペニアの評価には,自己記入式質問紙であるSARC-F 日本語版(SARC-F-J)を用いた.肥満の定義はbody mass indexが25以上とした.多重ロジスティック回帰分析を用い,サルコペニア,肥満,及びサルコペニア肥満のLVDDに関するオッズ比を算出した.結果:291例(男性157例,女性134例)が本研究の解析対象となった.男性における,サルコペニア単独,肥満単独,及びサルコペニア肥満のLVDDに関する調整後オッズ比はそれぞれ,0.82(95% confidence interval(CI),0.20 to 3.27,P=0.784),1.92(95% CI,0.69 to 5.32,P=0.207),6.41(95% CI,1.43 to 28.53,P=0.015)であった.一方,女性においては,サルコペニア単独,肥満単独,及びサルコペニア肥満のLVDDに関する調整後オッズ比はそれぞれ,1.31(95% CI,0.31 to 5.51,0.708),1.41(95% CI,0.45 to 4.37,P=0.551),3.18(95% CI,0.93 to 10.9,P=0.064)であった.結論:男性高齢糖尿病患者において,サルコペニア肥満はLVDDと有意に関連していた.

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© 2019 一般社団法人 日本老年医学会
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