日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
回復期リハビリテーション病棟における積極的摂食嚥下リハビリテーションの院内肺炎予防効果
山本 ひとみ牧上 久仁子福村 直毅牛山 雅夫
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 56 巻 4 号 p. 516-524

詳細
抄録

目的:回復期リハビリテーション(回復期リハ)病棟で入院患者に積極的な摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)と栄養療法の強化を行い,入院中の肺炎発症予防効果を検討する.

方法:本研究は後ろ向きコーホート研究である.46床の回復期リハ病棟において,積極的な嚥下リハ手法(新手法)が導入された前後で,入院患者の肺炎発症率を比較した.アウトカムは入院中の肺炎発症とした.新手法群で新たに導入した手法は,入院時全症例に嚥下内視鏡検査を行って食形態・摂食体位を指示する,体位による唾液貯留位置のコントロール等による慢性唾液誤嚥対策,経口・経管あわせて原則2,000 kcal/日を目標として栄養管理を行う,などである.新・旧手法群で患者背景が異なっていたため,統計的手法を用いて新しい嚥下リハ手法の肺炎発症予防効果を検討した.

結果:新手法の嚥下リハを受けた291人と,それ以前に入院した460人を対照群として比較した.新手法群は旧手法群より嚥下障害の患者の割合が多かった(新手法群59.1%,旧手法群33.0%).肺炎発症者は新手法群5人(1.7%),対照群13人(2.8%)であった.肺炎発症を従属変数とし,年齢・性別と各患者背景を投入したロジスティック回帰を行ったところ,嚥下障害の調整オッズ比は24.0(95%信頼区間3.11~186.0,p=0.002)と大きかった.年齢,性別と嚥下障害の有無で調整した新しい嚥下リハ手法と入院中の肺炎発症の関連をみたオッズ比は0.326(95%信頼区間0.11~0.95,p=0.040)であった.

結論:嚥下障害は肺炎発症の重大なリスクであり,内視鏡等を用いて積極的に嚥下障害をスクリーニングし,栄養療法やリハを行うことで回復期リハ病棟入院中の肺炎発症を抑制できる可能性がある.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top