目的:老研式活動能力指標を用いて軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)のIADLが評価可能かどうか検討する.本人・家族評価における得点,本人と家族間の回答の不一致数から,MCIおよびADのスクリーニング法としての有用性を検討する.
方法:MCI群39例,AD FAST4群50例,AD FAST5≦群19例を対象とし,認知機能が正常であったNC群187例を正常対照とした.老研式活動能力指標を本人と家族に実施した.4群の総得点および下位項目得点を比較した.また,MCIやADを判別する精度を検討するため,ROC曲線を作成し,AUCを算出した.
結果:家族評価の得点は,NC群に比し,MCI群,AD群の順で有意差をもって低下した.本人評価の得点には,家族評価ほど著明な差は見られなかった.MCIおよびADは,家族評価総得点にて感度85.7%,特異度90.9%で判別が可能であった(AUC=0.913).MCIのみの判別では精度が低くなった(AUC=0.787)が,全13項目のうち本人と家族の回答が不一致であった項目の数を指標とするとAUCは0.847となった.判別に重要な項目を検討したところ,「病院を見舞うことができますか」「若い人に自分から話しかけることがありますか」「バスや電車を使って一人で外出できますか」の3項目の不一致数でAUCは0.847となり,感度79.5%,特異度85.6%となった.
結論:老研式活動能力指標は,早期を含むADの重症度に応じた評価が可能な尺度である.家族評価の得点を用いると,MCIおよびADは十分な精度をもって判別できる.MCIの判別では,本人と家族の評価の不一致数の精度が高くなる.