日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸リハビリテーションの利用実態:医療介護レセプトデータ分析
北村 智美五十嵐 歩吉江 悟森田 光治良城 大祐飯島 勝矢山本 則子
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2021 年 58 巻 1 号 p. 111-118

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抄録

目的:高齢COPD患者における呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)の利用実態を明らかにする.方法:千葉県柏市の2012年4月から2013年3月までの医療・介護レセプトデータを用いた.同期間にCOPD(ICD10コードJ41-J44)の診断で外来受診が2月以上あり,COPD関連薬の処方が2月以上ある63歳以上の者を抽出し,入院・外来・在宅呼吸リハの利用実態を調査した.入院呼吸リハは,入院で呼吸器リハビリテーション料(I)(II)の算定が1回以上ある場合を,外来呼吸リハは外来で呼吸器リハビリテーション料(I)(II)の算定が1回以上ある場合を,在宅呼吸リハは医療保険・介護保険における訪問リハ・看護のいずれかの利用が1回以上ある場合を“利用あり”とした.結果:対象者2,682名の平均年齢は76.8歳だった.入院・外来・在宅呼吸リハ利用者はそれぞれ,61名(2.3%),25名(0.9%),101名(3.8%),年間利用月数の中央値は1カ月,2カ月,11カ月だった.対象者の平均年齢は,呼吸リハ非利用者と外来呼吸リハ利用者では76歳代だった一方,入院呼吸リハ利用者及び在宅呼吸リハ利用者では約80歳と高い傾向がみられた.要介護認定を有する者は,非利用者,外来呼吸リハ利用者で2~3割程度だった一方,入院呼吸リハ利用者では約半数を占めた.在宅呼吸リハ利用者ではほぼ全数が要介護認定を有しており,要介護3~5が半数以上を占めていた.結論:病院・在宅ともに呼吸リハ利用率は低いため,普及に向けた取り組みが必要である.各呼吸リハの利用期間や利用者の特徴が異なることから,呼吸リハ種別毎に介入内容や評価方法の検討が重要である.通院が可能なCOPD患者に対する外来呼吸リハの拡充や,呼吸リハ提供施設が不足している地域や定期的な通院が困難な患者に対する在宅呼吸リハの推進が必要と考えられる.

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