日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年腫瘍学の現状と将来展望
3.高齢がん患者のがん薬物療法
澤木 正孝
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2022 年 59 巻 4 号 p. 472-477

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抄録

がん治療はリスクとベネフィットのバランスで決められる.暦年齢のみで治療を手控えることは勧められない.標準治療は臨床試験で確立されるが,がん薬物療法では対象に高齢者が含まれることが少ないこと,薬剤の代謝・吸収・分布・排泄に関わる生理的機能変化の為,非高齢者における標準的抗がん薬をそのまま外挿してよいか,判断が難しい.がんが余命を左右するかを検討し,併存症・臓器機能を検証した上で治療のリスク・ベネフィットと患者の嗜好・QOLの価値観等を総合的に勘案し治療を選択する.高齢者機能評価による生命予後の予測,抗がん薬の有害事象予測,足りない社会的資源の抽出等の役割に加え,評価を用い老年医学の見地に立った医療チームによる適切な介入によって,協働的意思決定支援を伴う個別化した治療を可能とする段階にきている.この点で老年医学との連携はますます重要になっている.

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© 2022 一般社団法人 日本老年医学会
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