日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
介護付き有料老人ホームにおける尿路感染症関連の薬剤耐性菌の発生状況とその背景因子についての解析
松浦 潤白川 光浩高橋 奈津子瀧 由香利宮田 恵名畑 孝
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2022 年 59 巻 4 号 p. 501-506

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抄録

目的:本研究の目的は,介護付き有料老人ホームにおける薬剤耐性菌の発生状況やリスク因子を把握・検討することである.方法:2020年1月から12月までの12カ月間に,3カ所の介護付き有料老人ホームにて尿路感染症を起こした高齢者48人(男性11人,女性37人)について,カルテ上の検査結果や患者情報を後方視的に検索し,好気性病原細菌について解析を行った.結果:分離菌のうちEscherichiacoli(E.coli)が37.1%と最多であり,E.coliのうちESBL産生菌は26.1%であった.E.coliにおけるレボフロキサシン(LVFX)への感性は47.8%であり,耐性は47.8%,中間は4.4%,第3世代セファロスポリンのセフトリアキソン(CTRX)は感性73.9%,耐性は26.1%,ST合剤の感性は81.8%,耐性は18.2%であった.また,ESBL産生E.coliでは,LVFXには感性0%,耐性83.3%,中間16.7%という高い耐性を示したが,ST合剤には感性83.3%,耐性16.7%と高い感受性を残していた.背景因子については,LVFXに感受性を示すE.coliを有する群と耐性を示すE.coliを有する群では,有意な差は認めなかった.しかし,CTRXに感受性を示すE.coliを有する群と耐性を示すE.coliを有する群とでは,CTRXに耐性を持つE.coliを有する群ほど,有意にBMIが低く(p=0.0389),検体採取の1年以内に何らかの抗菌薬使用歴を持つものが有意に多かった(p=0.0418).結論:高齢者施設においてE.coliのLVFX耐性率は極めて高い.ESBL産生菌も増加しており,尿路感染症においてLVFXの使用は可能な限り控えることが望ましく,抗菌薬治療を実施する場合には薬剤選択は慎重に行う必要がある.

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