日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
人工膝関節全置換術および人工股関節全置換術患者の術前フレイルは術後1週のFIMスコア低下に影響する
吉田 一樹沢谷 洋平柊 幸伸菊池 駿介浦野 友彦
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2025 年 62 巻 2 号 p. 178-186

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抄録

目的:フレイルと人工膝関節全置換術(TKA)および人工股関節全置換術(THA)の術後成績との関係を調査した報告は非常に少なく,エビデンスの蓄積は喫緊の課題である.本研究は,TKA/THA患者の術前のフレイルの有無が,術後の短期成績に与える影響を明らかにすることを目的とした.方法:2023年12月~2024年9月に実施された前向きコホート研究であり,対象はTKA/THAの予定手術を行った19名(平均年齢73.8歳)とした.手術前日に後期高齢者の質問票とJ-CHS基準によるフレイル評価と機能的自立度評価法(FIM)を評価し,術後1週に再度FIMを評価した.データ解析は,2つの指標で術前のフレイル有無による群分けを行い,術後1週のFIMスコアを比較した.結果:全体19名の内,後期高齢者の質問票が5点以上群は6名(31.6%),J-CHS基準でのフレイル群は7名(36.8%)であった.術前から術後1週にかけてのFIMの変化量において,後期高齢者の質問票が5点以上群(-23.2±10.1点,中央値-19.5点)は5点未満群(-13.8±4.7点,中央値-15.0点)と比較して有意にFIMスコアが低下した(p=0.029).同様に,J-CHS基準でのフレイル群(-23.1±8.8点,中央値-20.0点)は非フレイル群(-13.1±4.4点,中央値-13.5点)と比較して有意にFIMスコアが低下した(p=0.004).加えて,J-CHS基準でのフレイル群は非フレイル群と比較して術後1週時点でのFIMスコアが低値で(p<0.001),FIMスコアが110点未満の人数の割合も有意に多かった(p=0.017).結論:術前のフレイルはTKA/THA術後の短期成績に影響を与える可能性が示唆された.

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