2025 年 62 巻 2 号 p. 187-195
目的:施設入所の認知症高齢者における生活の質とその関連要因について探索する.特に,職員の支援によって変化させることのできる要因について調べ,施設での適切な支援,健康増進活動のあり方について示唆を得る.方法:対象は,筆頭著者が勤務する特別養護老人ホームに連続して3カ月以上入所し,認知症を罹患し,研究参加に同意を得た高齢者68人.QOLの測定はQuality of Life in Late-stage Dementia日本語版(QUALID-J)を使用した.加えて,背景的・身体的・心理的・社会的諸情報を既存の診療情報から抜粋,または筆頭著者による日常行動の観察によって得た.分析方法としては,従属変数をQUALID-J得点,独立変数を上記情報の各項目として解析を行った.収集したデータとQUALID-J得点とのSpearmanの順位相関係数を求め,相関が有意であった変数を独立変数として投入し重回帰分析を行った.結果:QUALID-Jと有意な相関が認められた変数は,疾患数,BMI,握力,下腿周径,食事形態,Barthel Index(BI),Clinical Dementia Rating(CDR),Neuropsychiatric Inventory-NursingHome,コミュニケーションレベル,MMSE,施設入所日数,面会頻度,余暇活動能動参加数,余暇活動合計参加数であった.重回帰分析で取り上げられた説明変数は,BI,余暇活動合計参加数,握力,CDRであった.すなわち,BI,握力が高く,施設内余暇活動に多く参加し,CDR値が低い人ほどQOLが高いという結果であった.結論:施設入所高齢者において,身体的・心理的・社会的要素がいずれも,認知症をもちながら生活する高齢者のQOLを高める要因であることが示された.これらを高める取り組みがQOL向上につながると示唆された.