日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
片麻痺に合併する肩手症候群 (Shoulder-Hand Syndrome) について
江藤 文夫吉川 政己森松 光紀平井 俊策上田 敏
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1975 年 12 巻 4 号 p. 245-251

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抄録

肩手症候群は脳卒中の合併症の中でも, リハビリテーションを含めた実地臨床面で, 非常に重要なものである. 著者らは, 過去10年間における東大老人科入院および外来症例, 過去5年間における東大リハビリテーション部症例を中心に, 片麻痺に合併する本症候群について分析し, 併せてその発生機序に関して指尖容積脈波による検討を加えたが, 結果は以下のごとくである.
脳卒中後片麻痺における本症候群の発生率は東大老人科入院症例, 同外来症例, 東大リハビリテーション部症例, 初石病院入院症例, 石和リハビリテーション病院入院症例について, それぞれ24.0%, 19.0%, 24.3%, 15.0%, 19.4%であり, 全例についてみると21.0% (538例中109例) であった. 脳硬塞と脳出血とでは発生率に差はみられない. 性別による差もみられない. 年齢と発生率との関係は, 概して高年齢者に目立ち, 40歳未満で本症候群を合併した例は一例もなく, 50歳代に多発していた. 麻痺側による差はない. 脳卒中発作後, 本症候群発生までの期間は平均2.3ヵ月であった. 麻痺の程度との関係は, Brunnstrom テストで stage III以下の重症例に多発していた. 右片麻痺では失語症を合併した症例に本症候群が発生し易い.
光電脈波計を用いて四肢の指尖容積脈波を検査すると, 本症候群を合併している片麻痺では麻痺側で脈波高が有意に増高し, 血管抵抗指数の減少を有意に認めた. 本症候群を伴わない脳卒中においても同様の傾向がみられたが有意ではなく, 健常者を含めた非脳卒中例では左右差はなかった. このことから脳卒中においては大脳皮質自律神経中枢の傷害による血管運動神経異常が, 麻痺側血流の増大を生ぜしめ, 本症候群発生に先行する重要な因子となる可能性も考えられる.

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