日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
神経疾患と褥瘡
右見 正夫東儀 英夫内山 伸治
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1977 年 14 巻 2 号 p. 110-114

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抄録

各種神経疾患における褥瘡発生の特徴を検討した. 対象は140例の老人剖検例である. 全症例における褥瘡の頻度は70%であった.
脳血管障害例において, 片麻痺を有する例では, 麻痺側により優位に褥瘡が発生する傾向を認め, また急性脳血管障害例では, 意識障害が高度なほど早期に褥瘡が発生しやすい傾向を認めた.
パーキンソン症候群では, 褥瘡の多発傾向が認められ, とりわけ黒質の脱色素を有するパーキンソン氏病に高率に褥瘡の多発傾向が認められた. 片側パーキンソン氏病の上一例では, 患側のみに褥瘡の発生が認められた.
筋萎縮性側索硬化症では, 長期臥床にもかかわらず, 3例中1例にしか褥瘡の発生が認められなかった. 早期に褥瘡の発生した一例は, 痴呆を伴い, 病理学的所見では, 脊髄前角細胞や側索の変性のみでなく, 他に広範な変性が認められた非定型筋萎縮性側索硬化症例であった.
頚椎症では, 褥瘡を合併しやすく, かつ褥瘡の多発傾向が認められた.
Charcot 以来, 褥瘡は, 筋萎縮性側索硬化症における negative 症候として注目されているが, パーキンソン病や非定型筋萎縮性側索硬化症においても重要な症候であると考えられる.
各種神経疾患における褥瘡発生の特徴の背景には, 自律神経系障害にもとづく皮膚栄養障害の存在が推定される.

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