14 巻 (1977) 3 号 p. 157-169
老性変化の病理形態学的研究の一環として在ハワイ日本人男子136例と在日日本人男子86例の剖検膵について逐齢的変化を組織学的ならびに微計測的に比較検討した.
膵重量, 膵外分泌腺 (膵腺) 組織量, 膵腺細胞数, 間質量の逐齢的減少を認めた. 膵島量は加齢の影響を受けず, 各年代でほぼ一定であった. 脂肪組織量は個体差が大きく, 一定の逐齢的消長を認めなかった. 膵腺細胞の大きさは在日群 (在日日本人) のみ逐齢的に増容したが, 在ハワイ群 (在ハワイ日本人) では高齢者でむしろ小さかった. 膵腺細胞核の大きさは在ハワイ, 在日両群とも逐齢的に増容した.
以上両群とも加齢による消長に本質的な差を認めなかったが, 在ハワイ群において膵重量, 膵腺組織量, 膵島量, 脂肪組織量, 膵腺細胞および核の大きさはすべて大であった. また, これら両群間の差は在ハワイ群のすべてが2-3世からなる50歳代以下に特に著しく認められ, 1世からなる70歳代以上ではその差が少くなり, 特に80歳代では両群における値が接近してくるものが多かった. この原因の一つとして, 在ハワイ1世, 2-3世, および在日日本人における生活環境, ことに栄養条件の差の果す役割を重視した.
既に報告された同一材料による肝の老化過程の様相と比較し, 膵の実質細胞である膵腺細胞数の逐齢的減少および核の逐齢的増容が軽度である点などを中心として, 肝細胞, 膵腺細胞の分化度の差や膵外分泌機能の代償の可能性その他についても考察した.