日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高年者の血清コレステロール・トリグリセリドに関する疫学的研究
年令, 皮脂厚, 老人環, 血厚, および心電図との関係
七田 恵子大場 京子芳賀 博上野 晴美柴田 博松崎 俊久高橋 重郎斉藤 紀仁
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1977 年 14 巻 4 号 p. 260-267

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抄録

東京都養育院老人ホームの老年者 (男子724名, 女子1,239名) 計1,963名を対象として血清コレステロール, トリグリセリドを測定し, 皮脂厚, 老人環, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 心電図所見との関連について検討した.
1) 血清コレステロール分布はほぼ正規型を呈し, トリグリセリドはやや右方に偏った分布を描いたが対数変換を行うと幾分偏りが是正された.
2) 5歳間隔の平均値で血清コレステロールの加齢変化を検討すると, 男子は横ばい, 女子は加齢とともに減少傾向を示した. トリグリセリドについても同じ傾向であった. すべての年齢層で性差を認め, 男子に比し女子は有意に高値であった.
3) 各変量における単相関係数を求めると, 血清脂質と皮脂厚の間に男女いずれも有意な相関が示された (血清コレステロール: 男子r=0.215, 女子r=0.241, トリグリセリド: 男子r=0.254, 女子r=0.327, いずれもp>0.001). 血清脂質と老人環の関係は男子のトリグリセリドにおいてのみ低い正相関 (r=0.101, p>0.05) がえられた. 夜間排尿回数と女子のコレステロールおよび, 夜間排尿回数と男子のトリグリセリドの間に低い負の相関がえられた. 血清脂質と血圧の関係では, 女子においてコレステロールと収縮期血圧との関係を除いて低い正相関々係を示し, 男子ではトリグリセリドと拡張期血圧の間にのみ低い正相関を示した.
4) 血清コレステロール. トリグリセリドに関し, 年齢, 皮脂厚・老人環, 夜間排尿回数, 収縮期血圧, 拡張期圧の6項目に対する偏相関係数を求めると血清脂質と肥満の指標である皮脂厚との関連は単相関と同様強いが, 皮脂厚などの要因を除外すると, 血清脂質と年齢および血圧との相関は低くなった. 男子において老人環および夜間排尿回数とトリグリセリドの間に有意な相関が認められた.
5) 血清脂質レベルによる心電図所見出現率に関して, 高脂血群に有意に高率である所見は見出せず, 低脂質群に心房細動ならびに高電位出現率の高い傾向が認められた. 年齢変化を鋭敏に表わした異常Q, ST-T所見についても脂質レベルによる一定の関係はなかった.

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