17 巻 (1980) 6 号 p. 624-629
虚血性心疾患と同様, 脳梗塞の場合にもHDLコレステロール値は低い. このHDLを増加させることにより心筋梗塞や脳梗塞を予防治療しようと試みられている. HDLコレステロールを指標として, これを増加させる要因ないし薬剤が種々検討されているが, HDLは分子量, 組成, 機能が異なる種々の分子の集合である. 従って抗動脈硬化作用を評価するためには, HDL全体の変化ではなくHDL亜分画を詳細に調べる必要がある.
本研究は脳梗塞患者に, 脂質代謝改善作用があるパンテチンを投与して, リポ蛋白の変動をHDL亜分画を中心に検討し, HDLの抗動脈硬化作用の面からその効果を評価しようと試みた.
12名の脳梗塞患者にパンテチン1000mg/日を3ケ月間経口投与し, その前後で採血し, 超遠心法によりVLDL, LDL, HDL2, HDL3を分離し, コレステロール, トリグリセライド, 燐脂質, 蛋白を測定した.
血清コレステロール, トリグリセライド, 燐脂質, VLDL, LDLの濃度は軽度減少したが, 有意の減少ではなかった. LDLの化学組成ではトリグリセライドが減少し, トリグリセライド含量の多いLDLの減少が示唆された.
HDLコレステロールは有意に増加し, 従ってHDLとLDLのコレステロール比も有意に増加した. HDLをHDL2, HDL3の亜分画に分けると, HDLの増加は主としてHDL2の増加のためであり, HDL3はほとんど不変であった. このためHDL2とHDL3のコレステロール比も有意に増加した. HDL2の化学組成ではコレステロールと中性脂肪が減少傾向を, 燐脂質は増加の傾向を示した. このようなHDLの変化は, 従来の知見から考えると, 抗動脈硬化作用の面から好ましい方向ではないかと考えられる.