日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
上部消化管内視鏡検査による生体反応の変化について
老年者における検討
久村 正也村尾 誠
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1981 年 18 巻 6 号 p. 469-475

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抄録
老年者101例を対象に, 上部消化管内視鏡検査に伴う被験者の生体反応の変化を調べ, 考察を加えた. 被験者の呼吸数, 収縮期・拡張期血圧, 心拍数はいづれも検査中に有意に増加し, とくに拡張期血圧は検査終了後も高値の持続傾向を示した. 心電図では検査により心筋虚血性変化の出現あるいは悪化, 各種不整脈の出没などを認めたが, これらの変化は主として, もともと循環器疾患を合併している被験者に多発する傾向があった. 胃内腔への送気による電気的心軸の変化は著明ではなかった. 血中コーチゾル値は検査によって有意に増加し, 検査が被験者に与えるストレスの大きさが示唆された. 血中コーチゾル値の上昇を示さなかった1症例は, 検査後7病日目に心不全で死亡した.
老年者に対する内視鏡検査に際しては, 偶発症防止のためにも, 被験者のもつ合併疾患, とくに循環器疾患に充分な注意が必要である.
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