20 巻 (1983) 6 号 p. 491-499
60歳から89歳までの老年者高血圧症例41名 (平均年齢73歳) を2群に分け Spironolactone (以下SPと略) 75mg/日又は Trichlormethiazide (以下TCMと略) 4mg/日を crossover 方式を用い4週間投与 (投薬期前半) したのち2週 washout 後他剤に変更し4週間投与 (投薬期後半) し, 血圧, 血漿レニン活性 (PRA), 血漿アルドステロン値 (PAC), ヘマトクリット (Ht), 血漿乾燥重量 (plasma dry weight, 以下PDWと略す), 血漿Na, K値への影響を検索した.
SPとTCM両剤の降圧効果はほぼ同等であった. 投薬前の安静時PRA(普通食, 食塩10g)により1.0ng/ml/h以下と1.1ng/ml/h以上の群に分けると前群 (n=22) で降圧有効例 (平均血圧で10mmHg以上下降) 59%, 後群 (n=19) では19%で有効率に有意差があった.
PRA, PACは投薬により前値の2~3倍に上昇した. PRAは降圧無効群で有効群に比し投薬前と投薬期後半で有意に高く, PACは両群間で各時期とも殆んど差がなかった. 投薬後のPRAと平均血圧の下がりとの間には両剤でともに負の相関がみとめられた (p<0.05).
TCMによるPDWの増加量は降圧無効群で0.37g%, 有効群で0.05g%で有意差があった. TCMによるPDWの変化量と平均血圧の下がりとの間には負の相関がみとめられ (p<0.05), 血漿量の減少量と血圧降下度との間の負の相関が示唆された. SPによるPDWの変化量と平均血圧の下がりとの間には相関がみられなかった.
Htの変化量とPRAとの間の相関はTCM投与後r=0.23, SP後r=0.40で後者で相関 (p<0.05) をみとめた. PDWの変化量とPRAとの間にはTCM, SP投与後それぞれr=0.31, r=0.20で前者で弱いが相関をみとめた.
以上の成績から降圧利尿剤に対する抵抗性はPDWの上昇で示される循環血漿量の減少に伴うレニン・アンギオテンシン系の亢進が原因と考えられた.