日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳は老化するか
朝長 正徳
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1986 年 23 巻 3 号 p. 259-263

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抄録

ヒトが他の動物とことなり長寿を獲得した背景にすぐれた脳の働きがある. 実際に, 高齢でも知的機能のよくたもたれた人もすくなくない. この様な優秀高齢者の脳について検討し, 最近の研究成果をレビューした.
1. 老年者では結晶性能力はよくたもたれる.
2. 脳重を体重比にすると他臓器とことなり加齢による減少が少ない.
3. PETによる脳の左右半球および局所のブドウ糖利用に加齢による減少がない.
4. 海馬における神経細胞の樹状突起の計測では若年者よりも老年者でよく発達していた. 老動物の神経細胞でも突起を伸す能力がある.
5. 知的能力のたもたれた超高齢者では脳の老年変化は著しいが, その神経突起は同年代のものに比して極めてよくたもたれていた.
6. しかし, 一般に知能のたもたれた老人では老人斑や軟化巣などはすくない.
7. 視神経萎縮例 (高度の視力異常) では, そうでない例に比して脳重が軽い. したがって, 脳血管障害, 老年痴呆, 感覚器障害などの脳の老化を促進するリスクを制御することにより, 高齢まで知能はたもたれると考えられる.

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